かわいい動物たちが恐怖に立ち向かう成長記録【ペット2感想】
ミニオンズでおなじみのイルミネーションが手がけるペットの続編が公開になりました。
最近は続編ものといえばシュガー・ラッシュの続編であるシュガー・ラッシュ:オンラインや、トイ・ストーリーの続編であるトイ・ストーリー4など、主にディズニー映画の続編を見ることが多かったです。ただ個人的に最近のディズニー映画の続編ものに対してややモヤモヤとすることが多かったのですが、今回のこのペット2はもう何も言うことがないくらい最高の出来だったと思います。ペットを見た人間がペット2に求めるものがこれでもかと詰め込まれていました。
で、とりあえず予告編の動画を見て下さい。
今回、主人公マックスの飼い主であるケイティにリアムという息子が生まれるところから物語が始まります。またこの始まり方もほぼ勢いで最高でした。開始5分でケイティが男と出会って付き合って結婚して妊娠して出産します。ここのくだりを最低限に縮めたのもテンポの良さに生きてきているんだと思います。
さてさて、予告を見て(今回はリアムと旅行に出かけて、リアムを助けたりするのかなあ〜)なんて思ってたのですが、これもう、想像以上にリアムは物語にあまり絡んできません。あくまで立ち位置的にはマックスの勇気を奮い立たせるきっかけとなる存在なんですね。
そもそも原題は“The SECRET LIFE OF PETS”であり、人間の見えないところでのペットのお話なので、当然といえば当然なのですが。そりゃリアムに何かあったらペットたちよりケイティたちの方が行動するでしょう。
そんなわけで、メインの登場人物は増えたものの、今回もまた人間ではなくペットたちの冒険のお話になっています。
今回は大きく分けて農場旅行編、猫屋敷編、サーカス編の3つのストーリーから成り立っており、3つの話が同時進行で進んでいきます。とはいえそれぞれが独立したお話なので複雑に絡み合ったりもせず、全然難しくありません。ほぼ何も考えないで勢いで見てもめちゃくちゃわかりやすいです。
ここから先ネタバレ箇所がありますのでお気をつけ下さい。
農場旅行編
マックスとデュークは、飼い主のケイティと一緒に楽しく穏やかな生活を送っていた。ケイティはチャックという心優しい男性に出会い、結婚。息子のリアムが誕生する。マックスはリアムを我が子のように可愛がるが、過保護のあまり、彼が100%安全かどうか、いつも心配するようになってしまう。
ある日、ケイティたちと家族旅行に行くことになり、その旅行先の農場で、真面目で威厳あふれる農場犬のリーダー、ルースターと出会う。
心配性で臆病なマックスは、ルースターから自分の行動と態度で大切なものを守るとはどういうことなのかを教わる中、ある大事件が起こる…。(公式サイトから引用)
マックス
しょっぱなで「子供は嫌い、ケイティに子供がいなくてよかった」と、散々子供嫌いを語っていたマックスでしたが、リアムが生まれて成長して自分のことを愛してくれる存在だとわかった途端に手のひら返してリアム大好きになっちゃうマックスかわいい。あらゆる危険からリアムを守るために奮闘するのですが、何のことはなく、怖がっているのはマックスだけなんですね。リアムは雷が鳴っても起きもしないし鳩の群れも車も自転車もへっちゃらで(それはそれで保護者目線だと怖いですが)、ただ怖がっているのはマックスです。
そんなマックスがルースターと出会い、変わる姿がとても良かった。最初こそルースターの何にも恐れず立ち向かえる強さを真っ直ぐ認められなくて、認める強さがまだマックスにはなくて、ルースターのことを否定してしまいます。
仔羊のコットン(この子もまたちょい役ながらめちゃくちゃキャラ強すぎてどういうこっちゃという気持ちになった)を救うとき、一歩間違えれば死ぬかもしれない状況でルースターに支えられながら「怖くなんかない!」と自分に言い聞かせて勇気を出してコットンを救ってからマックスはガラリと変わりました。もう本当に変わった。成長しすぎて泣く。初めの頃なら絶対にできなかったであろう、狼に立ち向かったり、トンネルの上から列車に飛び乗ったり、悪役のセルゲイに噛み付いたり、そういったことをもう、何のためらいもなくしちゃうんです。あの雷に、鳩に怯えていたマックスが。もうこれ書きながら泣きそうになってる。
狼に立ち向かう時に「僕の中のルースターを探してくる」と言いながら狼の元に向かうんですが、やっぱり怖さを消してくれる存在はルースターであり、その支えを精神的柱として“怖くなんかない”という魔法の言葉を言い聞かせることによって、もう怖いものがないマックスになれるんだなあと思うと、成長したね〜〜〜〜!!!!!と頭ゴシゴシ撫でてあげたい。
“人生は何が起こるかわからない。その時、道は二つ。逃げ出すか、立ち向かうかだ”
“見てほしい、僕の大事な子に。広くて、怖いけど、素晴らしい世界を”
マックスがこんなセリフをリアムに言えるようになったことがもう何より素敵で最高でした。
デューク
今回はあんまり表立った出番がなくて寂しかったのですが、もう常にいい奴すぎてこっちも頭ゴシゴシしてあげたい。
マックスとの距離感が絶妙なんですよね。マックスが言うこと、することを肯定しすぎず否定もしすぎず、相手の意見を受け入れつつ自分の意見を言える。す〜〜っごくいい子ですデューク。
ルースターを初めて見たとき、デュークは「かっこいい!」と感動するのですが、それに対してマックスが「かっこよくなんかない」と言うと、「そうだな、かっこよくないよな」と言ってあげられる。なんて空気を読める子なんだろう。別にマックスに流されてるわけじゃなくて。相手によって自分の意見をコロコロ変えるわけではなく、相手の顔色を見てその時々に応じて適切な対応ができるっていう、なんていうか犬から学ぶコミュ力術的な。ある意味一番大人なんじゃないかデューク。
結局最後のセルゲイを倒すところは出てこず、今回はサブキャラ的な立ち位置となってはいますが、デュークいい子……。喋らないところでも、彼は初対面のチャックやチャックの叔父さんに飛び付いてめちゃめちゃに懐くんですよね。そういう他人に対する警戒心のなさというか、オープンマイマインドなところとか、多分性格に難ありのペットのキャラクターの中では飛び抜けてコミュニケーションを取るのが上手だと思います。
前作では結構嫌な奴的な描き方もありましたが(マックスが心を開いていなかったので仕方ないのですが……)今回はもうとにかくいい子すぎました。満点すぎる。
ルースター
日本語吹き替えでは内藤剛志さんでしたが、元々はハリソン・フォードっていう、そんなのかっこいいに決まってるやつじゃないか。かっこいいことが声帯で約束されている。そんなルースターです。
かっこいいけどどこか抜けているところが愛嬌ありましたね。鳥用の水飲み器を自分のと間違えていたりとか、電源コードは一回噛んで感電して以来怖くて噛んでないとか。
電源コードを一回噛んで感電して怖くなってから噛むのをやめたという話から分かるように、ルースターはよくわからないけど怖そうだからやめておこう、という考えは持っていません。この点は石橋があったら叩いて叩いて叩きまくって、でも落ちたら嫌だから迂回しようとしそうな注意深くて臆病なマックスとは真逆です。
世界のあらゆる危険からリアムを守るマックスに対しては、デュークとは違いルースターは「間違っている」とハッキリ言います。子供が木に登るのの何が悪いのか、それで怪我することの何が悪いのか。痛みから学ぶことも沢山ある。これはペットならではな気もします。ペットって飼い主がどんなに口で叱っても聞きもしないけれど、その結果自分が痛い目にあったらもう二度としなくなります。
立ち向かうことでしか得られない学ぶことの多さを知っているからこそ、マックスの守りの姿勢が納得いかないルースター。でもコットンが行方不明になった時にマックスだけ連れて森に行ったあたり、なんとなくほっとけなさはあったんだと思います。
最後にマックスが寝てる間にバンダナを置いていくところはツンデレのデレを見た感じがして可愛かった。
猫屋敷編
旅行に行くマックスから一番のお気に入りのおもちゃ“ミツバチ君”を預かったギジェットは、うっかり数十匹の猫が住む部屋に落としてしまう。途方に暮れたギジェットは、猫屋敷に潜入しておもちゃを取り戻すべく、クロエに猫になる方法を伝授してもらうことに・・・。
(公式サイトより引用)
前回同様今回もマックス大好きという気持ちだけで生きていて最高に可愛かった。大好きな男の子のために頑張れる女の子はただただ可愛い。
ギジェットの行動の動機はいつだってマックスなんですよね。マックスが困ってるから、マックスが頼っているから、マックスが大変だから、だからマックスのために頑張らなきゃ!という、ただ直向きに真っ直ぐで、そのあまりの純情さに見ていて泣きそうになります。
前作の最後でちょっとマックスと想いが通じあった的な雰囲気になってた気がしましたが、なんか別に今回そんなこともなかったですね。(笑)
ペット2のテーマが“恐怖に立ち向かう”だとすると、ギジェットは猫という恐怖に立ち向かうというストーリーになっていると思います。今回はマックスの大事なミツバチくんのために猫になりました。ギジェットは結構お利口なので作戦をいくつも立ててみたり、あと結構肝も座っているのでいざという時起点が効きますね。ギジェットなら大丈夫でしょ、みたいな安心感があります。
ギジェットのシナリオ、というかクロエが出てくるシーンはだいたい猫を飼ってる人ならわかるような猫あるある満載で、実家に猫がいる私も笑ってしまうような場面が多々ありました。一番面白かったのは猫の大群に向かってギジェットがレーザーポインタの光を掴んで食べて見せたところ。レーザー光って猫みんな大好きで捕まえようとするんですが、絶対に捕まえられないのが悲しいところで。そんなレーザー光を物体としている掴んでみせたギジェットに、他の猫がひれ伏す様がわかりやすすぎて最高でした。
最後、ギジェット率いる猫軍団が猫屋敷のおばあさんに車を出させてセルゲイを轢くシーン。あれ昨今の日本ではなかなかに笑うに笑えないシーンでしたが。あのオチもいいなと思いました。散々アクションシーンがあってからの、最後セルゲイが立ち塞がって絶体絶命大ピンチ!という流れだったので、ここでまたアクション入れるのはちょっとくどくなりそうでした。それをあえて一瞬で終わらせる引き際の良さ。なんていうかペット2は本当にテンポがいい。3本のストーリー仕立てで且つ90分映画なので無駄なシーンがほぼ無いんですね。めちゃくちゃ見やすい。
無駄なシーンと言えば、ギジェットがマックスの家から出てくるスノーボールを見たときの2人の会話。あれ謎すぎて可愛いですね。あの会話に何か意味があるのかはわかりませんが……。
サーカス編
飼い主に捨てられた・元ペット軍団のリーダーだったスノーボールは、新たな飼い主の少女との生活の中で、いつの間にか自分を“スーパーヒーロー”だと思い込んでいた。そこへシーズーの女の子デイジーが、悪徳サーカス団に囚われた友達のホワイトタイガーのフーを助けてほしいとやって来る。早速、救出のためスノーボールとデイジーはフーがいるサーカス小屋に向かうが・・・。
(公式サイトより引用)
スノーボール
前回の身寄りのないうさぎから一転して、今回は初めから全力で飼い主のモリーに愛されまくりのスノーボール。いや、もう登場1秒でかわいい。はい、かわいいね。あんな大スクリーンであんな可愛い寝顔見せられてどうしたらいいの。こっちの気持ちも考えてくれよ。悶えることしかできない。そりゃ家にあんな真っ白くてふわふわでかわいいうさちゃんがいたら毎日楽しいし起きてすぐ抱きしめて一緒に歯を磨いてご飯を食べてお着替えさせてテレビ見ておままごとして抱きしめてよしよししてキスきて世界の何より愛することしかできないでしょうに。
ヒーローに目覚めたって言われてますが、前作からヒーロー気質ではありました。保健所に連れ去られた仲間は絶対に助けに行く姿は普通にヒーローだと思います。
ただ今回はスーパーマンのような振る舞いをする、完全なスーパーヒーロー(自称)となりました。これは飼い主であるモリーがヒーローものの番組をよく見ていたからだと思います。また、最後にはスノーボールをプリンセスの格好にさせるあたり、モリーはヒーローにもプリンセスにも憧れを持つ、いろいろなものを好きになれる素敵な女の子なんだなということがわかります。
スノーボールも意外と怖がりです。サーカスに侵入する時はビクビクしてますし、狼に追われた時もリトルセルゲイに追われた時も悲鳴を上げて逃げ回ります。臆病なところはマックスと似てるかもしれませんが、スノーボールは自分の中でスイッチのオンオフを行なっています。自分はスーパーヒーローだと思い込んでいる時のスノーボールは何も怖がることはありません。リトルセルゲイにも立ち向かうしセルゲイにも襲い掛かれる。ここはマックスが「怖くなんかない」と自分に言い聞かせて勇気を奮い立たせるのとよく似ている気がします。
私が今回のペット2のスノーボールで一番好きなシーンは、火を持ったリトルセルゲイに追いかけられている最中、デイジーの入った大砲にリトルセルゲイが火をつけてしまい、デイジーが「スノーボール!火を消して!」と言った時に即座に「わかった、わかった!」と言うところです。自分が追いかけられていて結構絶体絶命の中で、果たしてそんなことが言えるのか。どんなスーパーヒーローでも、自分がピンチの時に助けを求められて二つ返事で引き受けることは、なかなか難しいんじゃないかなと思います。そりゃ、何も考えずに答えただけだと言われてしまったらそれまでですが、そのあとちゃんとデイジーを一番に助けに行くところとか、なんかもう普通にヒーローですよね。そのあとリトルセルゲイとビンタ合戦からの目潰しで泣いちゃうところとかめちゃくちゃかわいいんだけども。
あとマックスがセルゲイと戦っている時にすぐに参戦したところも可愛かった。あのときのスノーボールはリトルセルゲイを倒したこともあってか完全にスーパーヒーローモードに入っていたので強気でしたね。
あとはフーの住処を探すところ。ポップスのところを追い出されたフーをマックスたちの家に連れて行くんですけど。これ一見するとフーの扱いがめんどくさいからマックスの家に置いたのかなとも思ったんですが、そのあとでちゃんとマックスの家まで行って様子を見に行ってますし、意外と面倒見はいいかもしれないですね、さすが元ペット軍団リーダー。
そんなわけでペット2はスノーボールがひたすら可愛かったです。
パンダ!!パンダパンダパンダパンダ!!!
デイジー
多分今回初めから最後まで一番勇敢だった女の子。フーの檻の鍵を手に入れた際、スノーボールに言った「鍵を手に入れたって言ってんだよ!」はかっこよすぎて痺れた。
狼にも立ち向かって、この子はわりと怖いもの知らずなのかなと思ってましたが、のちに仲間たちに「めっちゃ怖かった」と話しているあたり、彼女もまた今回のテーマに当てはまる存在ですね。
彼女は本当に狼にもセルゲイにも何に対しても勇敢に立ち向かうし、頭を使って戦ったりもします。相当できる子です。
それから伊藤沙莉さんの吹き替えがバッチリ合っててすごく良かったですね。デイジーのさばけたかっこいい性格に伊藤さんのハスキーボイスがめちゃくちゃマッチしてました。
ペット2は全体的に吹き替えの芸能人の声がキャラに合っているので、そんなに違和感なく見ることができると思います。それから普通にギジェットやスノーボールなどのプロの声優さんはさすがのハマり具合でした。
そんなかんじでペット2、本当に最高でした!見れば見るほどに泣けますし、スノーボールがマジで可愛いです。
舞台挨拶でセルゲイ役の宮野真守さんが「キャラが立っていないと3つのストーリーを同時進行はできない」と言っていましたが、本当にその通りだと思います。ペットという作品の世界観とそこに住むペット達の個性が確立されているので話の流れもキャラクターの性格も安定していますし、こちらも安心してみることができました。前作から監督も続投していましたし、そういった点からも丁寧に大事に作られた作品だなと感じました。ペット3を早く作って下さいイルミネーション。ディズニーアニメーション、ピクサーに十分並べる作品だと思います。
公式サイトの本気を見た【マローボーン家の掟感想】
やってる劇場結構少なかったのですが、先日見に行けました。
こういう“掟”系のホラー映画といえば、M・ナイト・シャマランのヴィレッジやヴィジットなど、結構前から題材としては扱われてきました。見てるこちらとしては何のための掟なのかわからないけれど、破ると何が起きるかわからないという得体の知れない気味の悪さと不安要素は結構クセになります。
今回のマローボーン家の掟はアメリカとスペインの合作映画で、田舎の古臭い雰囲気漂ういい空気感の映画です。
1960年代末のアメリカ・メイン州。緑豊かな片田舎にひっそりとたたずむ古めかしい母がかつて住んでいた屋敷に、母の姓マローボーンと苗字を変え4人兄妹が引っ越してきた。責任感の強い長男ジャック(ジョージ・マッケイ)、家族思いの長女ジェーン(ミア・ゴス)、頭に血がのぼりやすい次男ビリー(チャーリー・ヒートン)、まだ幼くて天真爛漫な末っ子サム(マシュー・スタッグ)。祖国イギリスでの悲惨な過去を捨てて彼らは、この人里離れた屋敷で新しい人生を踏み出そうとしていた。しかしその矢先、心優しい母親ローズ(ニコラ・ハリソン)が病に倒れ、この世を去ってしまう。「皆を守ってね。どんなときも」。ローズの遺言を胸に刻んだジャックは妹と弟たちに呼びかけ、「誰も絶対に僕たちを引き裂けない。僕らはひとつだ」と固く誓い合う。すると間もなく、突然の銃声によって兄妹は恐怖のどん底に突き落とされる。イギリスで悪名を轟かせた凶悪殺人鬼の父親(トム・フィッシャー)が脱獄し、執念深く彼らを追ってきたのだ。ジェーンの絶叫を耳にしたジャックは、血も涙もない父親に敢然と立ち向かっていくのだった……。
6ヵ月後。ジャックが父親を殺害したことで、4兄妹は静かな日常を取り戻していた。それでもジャックの内心は穏やかでない。どこからともなく響いてくる不気味な物音、天井ににじみ出す異様な黒い染み。兄妹以外の誰かが徘徊しているような気配が漂うこの屋敷は、明らかに何かがおかしい。臆病なサムは暗がりや鏡に"オバケ"が現れるのではないかと、いつもビクビクしている。それは死んだ父親の呪いのせいなのか、それとも屋敷そのものに忌まわしい秘密が隠されているのか。不安げな妹や弟たちを案じたジャックは、母の死後に生まれた「成人になるまでは屋敷を離れてはならない」「鏡を覗いてはならない」「屋根裏部屋に近づいてはならない」「血で汚された箱に触れてはならない」「"何か"に見つかったら砦に避難しなくてはならない」という5つの"掟"を厳守するよう言い聞かせていた。妹弟の親代わりを務めるプレッシャーに押しつぶされそうなジャックの心のよりどころは、地元の美しく聡明な女性アリー(アニャ・テイラー=ジョイ)の存在だ。ある日、街の図書館に務めるアリーのもとを訪ねたジャックだが、そこで弁護士のポーター(カイル・ソラー)から思いがけないことを告げられる。彼らが屋敷を正式に相続するために、母親ローズの署名と手数料200ドルが必要だというのだ。母親が死亡した事実を隠し、生活資金も残りわずかのジャックは動揺を隠せない。そして妹弟と相談した結果、ジェーンが母親の筆跡を真似て書類にサインし、父親が犯罪で稼いだ"箱"の中の大金に手をつけ、急場をしのぐことにする。しかし、それは「血で汚された箱に触れてはならない」という自分たちの掟に背く行為だった。
初めて掟を破ったその直後から、兄妹は次々と悪夢のような事態に見舞われていく。母親の部屋にこっそり入ったサムが、誤って鏡を覗いてしまい、得体の知れない影を目撃。掃除中に奇妙な音を聞いたジェーンは、天井裏に潜んでいた正体不明の何かの手に触れられ戦慄する。さらに、煙突から屋根裏部屋に忍び込んだビリーだが、屋根裏に潜む何かに襲われて重傷を負ってしまう。果たしてマローボーン家の屋敷に潜む"何か"とは?
そしてジャックを容赦なく苛んできた本当の恐怖の正体とは……。(公式サイトより引用)
以上が公式サイトにあるあらすじですが、これびっくりすることにストーリー全体の6〜7割くらいの内容が書かれています。
見終わってから改めて公式サイトみて、いやこれこんなに書いていいのかとソワソワしちゃったんですが、まあ公式サイトがいいならいいんでしょう笑。
たしかに最後の3〜4割にこの映画の全てが詰まっているので前半部分はあらすじみたいなものですし、結構言葉での説明が最低限なので、なんの予備知識もないと内容が理解しにくいかもしれません。そう考えればある程度ストーリー理解してからの方がいいかもですね。
それで、まあ感想なんですけど、正直見てくれ以外何も言えない。これは見てほしい。ストーリーも、殺して天井裏に閉じ込めたはずの父親が生きていて4兄弟を追い込んでいくっていう、めちゃくちゃ簡単に言えばそういうお話なんですけど、それでなぜ、
1.成人になるまでは屋敷を離れてはならない
2.鏡を覗いてはならない
3.屋根裏部屋に近づいてはならない
4.血で汚された箱に触れてはならない
5."何か"に見つかったら砦に避難しなくてはならない
という掟を定めなければならないのかというところに議論が進むわけです。
特に2なんて、父親が天井裏にいるのにどうして鏡を見てはいけないのか、正直最初はさっぱりわからなかったです。鏡に化け物が映るからという理由って話ではあったんですけど、漠然といきなりそんなことを言われても、見てる側からすれば「??」ってかんじです。しかしそれも終盤でその理由がわかった時はゾッとしました。
そう、終盤に過去と現在が同時進行で進む場面があるのですが、その演出も良かった。見てくれ。
それから内容に触れないとすると、キャストが絶妙。4兄弟は全員容姿整ってますが、どこか陰鬱としていて薄ら汚れた雰囲気が味を出していました。
うん、もう何も言えません。見て。見てほしい。こういう映画って面白いとか驚いたとか怖いとか、そういう下手な感想でもネタバレになりかねないんですよね。なのでもう何も言えない。見て。
とはいえ特に見る予定ない方もいると思います。そんな方は公式サイトに完全ネタバレが載っているのでそちらもご覧になってください。
もうちょっと見えちゃってますが笑。これも驚きましたね。公式サイトにもう全部載ってます。公式サイトのストーリー全部読んでも面白いし、見てから読んでも面白い、さらには内容を知った上で見ても絶対面白いですし、もうとにかく本当に見てほしい。
ホラー展開もそんなにないので、様々な方におすすめできます。とても面白かったです。
ツンデレコミュ障JKを攻略せよ【バリアブルバリケード感想】
メインキャストが急遽変わったり発売日が半年遅れになったりと色々ありましたが、奇しくもその延期された発売日が2019年4月4日となり、ついにオトメイトが公式をあげて私の誕生日を祝う形となりました。
元々薄葉カゲローさんのイラストが大好きで、ウィルオウィスプ、ワンドオブフォーチュン、レンドフルールとプレイしてきた身としては、こちらのバリアブルバリケードは制作発表の段階で購入することは決めておりましたが、まさか予想外の誕生日プレゼントという形になって驚きです。(自腹)
逆攻略乙女ゲームということだったのですが、どういうこっちゃいと思いきやそのまんまでしたね、まさしくヒロインが逆に攻略される。
東条家という絵に描いたようなお金持ちの家系に生まれたツンデレコミュ障ヒロインの東条ヒバリちゃんとお近づきになろうと頑張る成人済み無職4人の話です。
人並みに乙女ゲームはやってるとは思いますが、いつもなら(こういう選択肢が好きなんやろ??知ってるんやで、ワイに任せとき、幸せにしたるでな……)みたいな、どこかの某魔法使いが言っていた「都合のいい女の子を演じる」というプレイになるわけですよね。こうすりゃ好感度あがんだろ〜みたいな。
でもこれ、私だけかもしれないのですが、(一生懸命だもんね、優しくするからね、大丈夫だよ)みたいな気持ちになるんですよね、謎に。同情じゃないんですけど、そんな気持ちになってしまう。特に壱哉と那由太くん。
そんなバリアブルバリケード、通称バリバリをクリアしましたのでその感想です。個別ルートやエンディングに関するネタバレをしておりますので、少しでもネタバレに敏感な方は閲覧をお控えください。
東条ヒバリ
とりあえず一番言いたいのは、藤田さんの声が可愛すぎる。め〜ちゃくちゃ可愛い。フルボイス最高。普通の声も恥ずかしがってる声も怒鳴ってる声も全部可愛かった。なんなら藤田さんのバリバリ発売日のブログも可愛かった。
ヒバリちゃんは見た目こそ大人びてますが、実際はごくごく普通の17歳の女の子です。ごく普通というか、素直じゃなくて不器用でコミュ障で心を開くまでに時間がかかって心を許した相手にはとことん懐く、そんな拗らせ気味の女の子です。
そもそもヒバリちゃんが4人の婚約候補を宛てがわれたのは、4人がヒバリちゃんに足りないものを持っているからという理由でした。やってみてわかるんですが、ヒバリちゃんは各ルートで全く違う女の子になります。壱哉ルートなら弱い彼を支える女の子に、大我ルートなら素の自分をありのままさらけ出す女の子に、汐音ルートなら甘えることを許容されることに戸惑う女の子に、那由太ルートなら夢見がちな女の子に。
全く違う表情を見せて全く違うタイプの女の子になるのでプレイしていて楽しかったです。しかしこの子、かなり拗らせているのでおそらくではありますが共依存関係じゃないと不安になってしまうタイプの、相当厄介な子だと思います。
親もいない、祖父は怖い、頼れるのは専属執事の春日だけという人生でしたから、人との付き合い方がめちゃくちゃ下手くそなんですね。あまりに春日に管理されてきたので交友関係も薄く恋愛経験もなし。人を好きになるって、人から愛されるって、求められるってどういうこと?と、各ルートで自分と相手の気持ちに何度も何度も悩みます。
ハッキリ言って彼女の恋愛観は私は最後まで理解できませんでした。特に壱哉ルート。側から見てる分には面白いんですけど、乙女ゲームの主人公として感情移入しようとするとなるとなかなか難しいかなあ……という感じです。これ、ヒバリちゃんが今回フルボイスだったので客観的に楽しめましたが、ボイスなしだったら少なくとも途中まで感情移入して、最後で(アンタそんな……アンタの愛重すぎやろ……)となってたと思います。そのくらい藤田ボイスの可愛さの暴力がすごい。もうほんと、ヒバリちゃんの声帯が藤田さんでよかった。
あと、やっぱりヒバリちゃんの心情がわかっているというこちら側のユーザー視点だと、ヒバリちゃんの言動や行動にも納得がいきますね。逆に私が花婿候補たちの立場でヒバリちゃんの心の内を知らないまま彼女と接していたら確実に心が折れてると思う。そのくらいこの子は難解です。
光森壱哉
いやもうメインヒーローじゃなくメインヒロインですね、彼。壱哉ルートは、こればかりはどう考えても壱哉に壁ありまくりすぎてヒバリちゃんがその壁を一生懸命不器用ながらも壊してあげるっていう逆逆攻略でした。
第一印象こそ女慣れしてる余裕満々の男ですが、誰よりもはちゃめちゃに豆腐メンタルの男、それが光森壱哉。
でも気持ちはわかるんですよね。誰からも認められなくて愛されないから、処世術ばかり上手くなって八方美人で生きるって、そっちの方が怖くないので。だって自分の意見を言って否定されるのって、やっぱり怖いじゃないですか。自分に自信がないならなおさら。素の自分でぶつかって愛されなかったらどうしたらいいんでしょう?傷付いたら誰が慰めてくれるんでしょう?だったら初めから相手に合わせて相手の望むように生きた方が楽だし傷つかなくて済むし、そうなっちゃうんですよ。わかります、めちゃくちゃわかる。私もそう、心のどこかで相手の中の正解を探しながら会話をしてしまう。
壱哉は愛されたことがないので愛し方も知りません。テンプレートみたいに甘い言葉を言うことしかできなくて、相手が本当に望むものがなんなのかがわからない、だから結局愛されないで終わってしまう。
壱哉と同じくヒバリちゃんもまた、愛されることを知りません。誰より愛されたがっているのに誰からも愛されたことがない2人だからこそ、お互いの気持ちがわかるんでしょう。
しかしながら、壱哉の真剣な告白にも疑問を感じてしまうヒバリちゃん。ここに彼女のとても厄介なピュアさが出てしまう。
あなたの恋人は私じゃなきゃダメなのか、他の人でもいいのではないか。
汐音が「どんなカップルにもその2人じゃなきゃいけない理由なんてない、出会った順番が早かっただけ」と言いました。「君じゃなきゃダメ」ってよく聞く言葉ですけど、その“君”に出会ってなかったら出会ってなかったで別の人に「君じゃなきゃダメ」って同じように思ってしまうもので。運命なんて、本当は単なる偶然なんですよね。
でもヒバリちゃんにしろ壱哉にしろ、めちゃくちゃ臆病なので、近付きたいのに自分が傷つくかもしれないから近付けない。そして相手を傷付ける。最悪の未来を想像して動けなくなります、どんだけ不器用だよってかんじなんですけど。
壱哉はすぐにめちゃくちゃ泣いちゃう子で、個別ルートなんてもう延々泣いてるのですが、彼の姿にドン引きしながらもちゃんとあやしてあげるヒバリちゃんが可愛かった。このルートのヒバリちゃん、本当にイケメンすぎて困りました。
私個人的にアナザーエンドのヒバリちゃんの振り切れっぷりが好きでした。とにかく壱哉と一緒に居られるという未来が欲しくて、そのためなら手段なんてどうでもいい。自分の立場がどうなろうと、何だっていい。
ヒバリちゃんは、こと恋愛に関しては弱々の弱ですが、恋愛以外であれば誰より素早く決断することができてしまう。そういうところはさすが大企業のご令嬢ですね。わりと壱哉がうじうじタイプなので、その対比が笑えます。
ただまあ、めちゃくちゃ冷静になって考えて26歳の男が17歳の女子高生に手を出すって……まあ、フィクションの世界ですから、まあいいか……。
石動大我
ルート入ってず〜っとニヤニヤしてました。共通ルートのときからなんとなくわかりましたが、たぶん大我だけがヒバリちゃんのことを最初から女の子として恋愛感情込みで意識してたんですよね。だって4人の中で一番ヒバリちゃんに興味ないのに、誰より早く彼女を抱きしめていたので。
大我ルートのヒバリちゃんが一番自然体で、最初こそ兄妹みたいな感じだったけどお互いを意識し始めてからもヒバリちゃんが無理してなくてすごく楽しそうだったのが印象的です。全クリしたあとだとさらにヒバリちゃんが大我を兄のように慕う姿が可愛らしく見えます。親も兄弟もいなかったので、そういう存在に憧れてたんですね。
しかし兄妹のような関係とは違う、何か別の感情がお互いに芽生えてしまう。この2人はお互い見たまんま両想いでした。可愛い。
ただそこはコミュ障のヒバリちゃん。気を許した相手には一気に一途で盲目で依存気味になってしまう。このゲームは本当にヒロインにかなり難ありなので、各攻略対象キャラの苦労が垣間見えます。
そして大我もそんなヒバリちゃんを見て不安になってしまう。自分は大した人間じゃないのに、ヒバリちゃんがやたらと「才能がある!すごい!最高!ヤバい!自信持て!」みたいに褒めまくるんですね、それはもう盲目的に。
自分は完璧な人間ではないのに、あまりに自分を盲信して過度な期待を抱いているヒバリちゃんが怖くなってしまうわけです。
わかりますよね、重い人間からは逃げたくなってしまうのが普通なので。それが好きな人からの期待だったら、余計に応えられなかったらどうしようってなっちゃうわけです。相手が失望して離れていくくらいなら自分から離れたほうがいいとか、距離を置いたりなんやかんやするわけで。
なんだかんだめんどくさいけど一番可愛らしいカップルだと思います。
共通ルートの部分で「喧嘩なんてしてなんの意味があるのか」と問うヒバリちゃんに「喧嘩をして本音でぶつかって本当の関係が築ける」的なことを言っていたのですが、個別ルート入ってからはまさしくその通りに喧嘩ばっかしてましたねこの2人。それでお互い言いたいことを真っ直ぐにぶつけられたんですね。
恋愛エンドで大我の胸ぐら掴んで泣きながら怒って告白するヒバリちゃんがわけわかんなくて可愛くて大好きです。
大我のいいところは、全然理不尽に怒らないところです。もう本当に怒らない。第一印象こそヤンキーの怖い人なんですけど、そこは流石にヒバリちゃんに怒るのでは……という場面でも怒らない。心の底から優しい人でした。こういう優しい人を見ると私は無条件に私の分まで幸せになってくれと思ってしまうので、もうマジでヒバリちゃんは大我のことを世界一幸せにしてあげてほしい。頼む。
黛汐音
いわた作品には必ずと言っていいほどこの立ち位置の男がいます。ウィルオウィスプのジル、ワンドのソロ、レンドのルイのような、こういう掴み所のなくてふわふわした一番の曲者キャラが。
例に漏れず、汐音もそうでした。
なんて言っても肩書きが天性のヒモです。私がなりたい。
ただ、レンドをプレイしたことがある方ならわかるかもしれませんが、私、彼はルイと同じタイプだと思っていたんです。ヒモ気質で愛されるだけ愛されて、それで人々から必要とされるけれどどこか虚無感があって、それをヒバリちゃんが埋めてあげる〜的な。
でも全然違いました。いや、めちゃくちゃ面倒くさい男ではあるけれど、それでも一番大人だった。彼のルートが一番「これは東条ヒバリという女の子の心の壁を壊すゲーム」ということを意識していたと思う。それほどまでに彼は丁寧に慎重に時間をかけてヒバリちゃんの心の壁を砕いていこうとします。彼女が望まないことは絶対にしないし、近寄ってほしくないときは絶対に近付かない。こっちが驚くほどヒバリちゃんの心が動くのを待ち続けます。
ヒバリちゃんはそんな彼に素直になれず甘えるということを怖がりますが、それでも諦めず、ときに仕掛けるように彼女の心を解していくんですね。辛抱強く待ってあげないと、という姿勢が常に見えました。彼は自分を“赦し”だと表現します。ヒバリちゃんからしたら、なんて甘い罠でしょうか。完璧を求められ、弱っている姿なんて見せることは許されず、常に周りが求める東条ヒバリであり続けなければならない。その呪縛が彼女を縛り付けていたわけですから、彼女が汐音に絆されてしまうのは正直時間の問題でした。
従来のいわたDの乙女ゲームだと、心を閉ざしたり愛されることを諦めた男キャラを主人公が頑張って振り向かせるのがよくある展開かと思います。それだけにこのルートはものすごく新鮮でした。
儚くてか弱そうな汐音ですが、蓋を開けてみれば誰よりも強かで聡くて計算高い。それこそヒバリちゃんのものになれるのならなんでもできてしまう男です。
いやほんと、個人的に4人の中で一番頼もしかった。一番安心してヒバリちゃんを託せる男だと思います。
予想を見事に裏切ってくれて、なんだか謎に清々しい。
八神那由太
この子はもう最初から犬でした。わんこ。喜んでパシられ、帰ってきてよしよししてやるとめちゃくちゃ喜ぶ。無邪気なので誰からも愛される彼ですが、素直で正直で嘘がつけなくて、典型的な癒しキャラかと思いきや、話が進んでいくと意外とそういうわけでもなく。初対面からヒバリちゃんにすごく懐いているんです。しかし真相を突き詰めると彼の好意の正体がなんなのかがわかるわけですが、それがなんともヒバリちゃんの精神をゴリゴリ蝕む。
なにせ那由太くんは典型的な純真無垢な少年なので嘘がつけません。彼から放たれる言葉は全て嘘偽りない彼の言葉なんですよね。対するヒバリちゃんは小さい頃から東条家という、いわゆるオトナの世界で生きてきた女の子です。その場その場で都合のいい嘘なんて簡単につけてしまう。そうして生きてきたから。周りのためなら自分の気持ちなんていくらでも殺してしまうことができる子です。
那由太くんは鈍感なので欲しい言葉なんてくれません。でもヒバリちゃんも「こういう言葉が欲しい」なんて、そんなことは口が裂けても言えません。幾度も幾度も彼を試しますが、全く何もうまくいかない。
そんな真反対の2人なので、すれ違いにすれ違いにすれ違いな展開になるんですよね。2人とも恋愛をしたことがないので、恋とか愛とか全然わからない。好きで側に居たいけど、それが恋だとは思わないだとか、単に憧れを相手に重ねているだけだとか、まあ本当にどちらからも恋愛に歩み寄れないのでもどかしい。完全に保護者目線のルートでしたね。
しかしながら、今まで自分の気持ちに正直に真っ直ぐに生きてきた那由太くんと自分の気持ちを押し殺してずっと我慢し続けてきたヒバリちゃんの極端な2人の不器用すぎる関係がとても可愛かったです。
個人的に面白いなと思ったのが、一見金持ちなお嬢様ヒバリちゃんの方がワガママで、素直な那由太くんの方が許容的で良い子みたいに見られがちだけれど、まるで逆というところですね。那由太くんの好き嫌いのわかれっぷりというか、嫌いなものへの興味のなさは少し恐怖すら感じました。
春日
いや、もう見た瞬間誰しもが思いました。お前は攻略キャラじゃないんかい。
イケメン執事と美少女お嬢様なんて一体何回そのシチュエーションで作品が作られたことか。
春日とヒバリちゃんの関係は物語の早々に語られました。完全なる主従関係。お互いに信頼はしているものの、恋愛感情は一切なし。
プレイしてみても、その関係は変わることなく、春日は常にヒバリちゃんに厳しくありました。しかしその厳しさが、時たまかなり自分勝手というか、彼も相当なワガママな人間なんだなと思わざるを得ない。ヒバリちゃんを庇護下に置いて常に監視して、一見して東条家とヒバリちゃんのことを第一に考えているのかと思うのですが、いやいやどう考えても春日は春日のことしか考えていない。
一番露骨なのは汐音ルートでの彼でしたね。汐音に対するあからさまな嫌悪感は、“ヒバリちゃんを心配する執事”というよりは、“この展開を全く面白いと感じていない一人の男”でした。
この時点で何となく(ただの執事ではない)フラグビンビンだったのですが、正直真相を知った今となっても言いたいことはやっぱり「春日は異常」。
う〜ん、でもヒバリちゃんもなかなかに変な子なので、この二人はこのままでいいんでしょうね。なんか知らないけどエピローグ幸せそうでしたし。お前らそんな簡単に切り替えられるのか……って感じなんですけども。
総評として、とても楽しめました!大満足です。
ただ思うのは、これ絶対発売延期せずに10月に売りたかっただろうな〜。そして多分キャスト変更で壱哉は鳥海さんになったけれど、壱哉も梅原くんで行きたかっただろうな〜。鳥海さんの壱哉最高に可愛くてよかったし、もう鳥海さん以外の壱哉は考えられないけど。なんとなくやっぱり壱哉が梅原くんだったら、また違った感じになったんじゃないかなと思いますね……。まあ本当に、鳥海さんの壱哉は最高だったのでなんの不満もないんですけど。
花婿候補4人ということで、4人とも最初からクライマックスにヒロインが好きなんじゃないか、4人とも無職なので全員ヒロインの金目当てな感じの話になってしまうんじゃないか、とかいろいろ思っていましたが、全然そんなことなかったです。どのルートも焼き増しになることなく、完全に4人とも別方向へ舵を切ってストーリーが進んでいくので、全ルート毎回新鮮な気持ちでプレイすることができました。
楽しかった!ありがとうございました!
言葉にして伝えられるうちに伝えておけ【死神と少女紹介】
先日乙女ゲームメーカーのTAKUYOからとある発表がありました。
【お知らせ】死神と少女PSVita版の発売が決定しました。
— 死神と少女広報局 (@sinigami_k) 2019年4月8日
PSVita版特設ページ(https://t.co/3aolruQAGN)の開設と共に、こちらの死神と少女公式Twitterを期間限定で再始動。
最新情報などはこちらから発信していきますので、ぜひ楽しみに待っていてください。 #死神と少女 pic.twitter.com/jxhRBlISV2
TAKUYOとは……死神と少女とは……なんなの……わからない……という方が多いかと思いますが、TAKUYOとは乙女ゲームを製作している会社で、死神と少女はそのTAKUYOが2011年に発売したPSP専用乙女ゲームになります。
正直言って、TAKUYO自体オトメイトやRejetなどの最大手というわけでもなく、そんなに有名な作品を作っているというわけでもないので、よっぽど乙女ゲームが好きな乙女ゲーマーは知っている作品くらいのものだと思います。
もう初めから言ってしまいますが、私はこの死神と少女という作品が人生で一番心に残っている乙女ゲームです。
好きとか嫌いとかではなく、心に残っています。もちろん好きか嫌いかと言われたら好きと答えますが、なんていうかそういうんじゃないんですよね、キモオタ全開の答えです。
そんな死神と少女が、8年という年月を経てVitaに移植となりました。この作品、おそらく他のTAKUYO作品と比べても圧倒的にVita移植希望の声が大きかったです。
実際にTAKUYOに来た要望メール件数を確認したわけでもないので、ただSNSでの声を見ただけですが、何年経っても「Vitaで移植してほしい」という声が消えることはありませんでした。
まあ今の時代におすすめゲームをPSPで紹介するってなかなかハードル高いですもんね。PSPってジーガージーガーうるさいし読み込み遅いし、快適プレイじゃないですから。
最近のTAKUYOは「死神と少女は死んでも移植しない」くらいのスタンスを取り始めていたので全然期待してなかったのですが、そんなことはなくてよかったです。TAKUYOは出来る子。
まあただぶっちゃけ、移植が決まって「さあ他人にすすめまくるぞ!」と思っても、このゲーム、やるとなるとめちゃめちゃ体力を使います。テキスト量もさることながら、そのストーリーの複雑さ、重さ。
わかる人には伝わると思いますが、死神と少女のシナリオライター藤元さんは名前こそ変わっていますが、あの“大正×対称アリス”のシナリオライター藤文さんです。そうです、あのとんでもなくとんでもない対アリのシナリオを書いた人物が死神と少女のストーリーを全て書き上げています。そりゃ体力使うに決まってる。
ただ勘違いしてほしくないのは、死神と少女は鬱展開やグロ展開などはありません。読んでて「もうやめて~」みたいになるシーンもほぼないです。
また、TAKUYO作品に必ずあるギャグパートも一切ありません。ただ淡々と真面目な会話が進んでいくお話です。
この作品、キーワードは“言葉”。
世界で一番美しい言葉を探す死神と旅人、言の葉システム、など、言葉がかなり大きなキーワードになります。
プレイしてもわかりますが、ゲーム文章は繊細な表現や美しい言葉で溢れています。
言葉って大事ですよね、言葉はコミュニケーションの最たるものでありますし、人を傷つけることも守ることも包むことも出来る。こんなものって世の中には言葉くらいしかないと思います。
死神と少女も、言葉の重さがとても重要になります。何気なく言った言葉や言われた言葉が真相に繋がっていたりします。まあこれがめちゃくちゃ巧みなんですよね、シナリオの練り込まれ具合がすごい。
いや、私何がしたいかって言うと、皆さんにプレイしてほしいんですよね。
私が8年前にプレイして感じたなんとも言えないあの気持ちになってほしい、全員。
初めは発売してから考察ブログでも書こうかと思ったんですが、もう散々考察はされているので、私は販売促進したいと思います。買ってくださいやってください。
因みに考察に関しましては、この方の考察がかなり素晴らしいと思うので、皆さん全クリしてから是非読んでください。
http://blog.souga.fem.jp/?cid=50008
考察に関して私から言うことはもう何もありません。素晴らしすぎる。
さてさて、どうやったら買ってもらえるかなんて全然わかりませんが、とりあえずあらすじやらおすすめポイントやら紹介していこうかなと思います。
まず、そもそもどんな話なのというところからですね。以下あらすじです。
ここではない世界のどこか遠い遠い東の国に、一人の美しい少女がおりました。
少女には作家の兄があり、いつも新作のお話を聞かせてもらうことを楽しみにしていました。
「今度の物語は、孤独な死神を主人公にしようと思っているんだ」
兄が語った今はまだ読むことが叶わぬ物語。
それは、死神と少女が蒼色の空の下で出会い、世界で一番美しい言葉を探す旅に出るというものでした。
少女はいつかその物語が完成することを楽しみに願っていました。
そんなある日のことでした。
蒼色の空の下、時が止まったままの時計塔を見上げている少女に、一人の青年が声をかけてきたのです。
振り向く少女の瞳に映るのは、薄い金の髪、そして空と同じ色をした瞳。
不思議な容貌をした青年は、記憶を失っていました。
青年がただ一つ覚えていること、それは自分が『死神』であるということ––
これは、死神と少女の物語。
(公式サイトより引用)
とまあ、これがあらすじです。設定自体は全然複雑ではありません。女子高生がヒロインの、よくある学園生活乙女ゲームです。世界観にも自然に入っていけると思います。
しかし、このあらすじについて、ここで一つ疑問があります。
冒頭にある、ここではない世界のどこか遠い遠い東の国って、どこなんでしょうね。
だって登場人物はみんな日本の名前だし、見るからに日本で間違いはなさそうです。でもこの舞台は、ここではない世界のどこか遠い遠い東の国なんです。さて、一体ここはどこなんでしょうね……。
遠野紗夜 -美しい少女-
今作のヒロインです。対アリでもそうでしたが、わりと我が強いタイプなので好き嫌いがかなり分かれますね。
この子はとてもしっかりしていて自分を持っていて、いかにも完璧なお嬢さんなのですが、めちゃくちゃ脆いです。なにせ最初から兄にめちゃくちゃ依存しています。強そうに見えてとても繊細で脆くて実はとても弱い。そんな女の子です。
蒼 -記憶を失った死神-
メインヒーローです。あらすじにありました、記憶喪失の死神です。
彼はとても真面目なキャラで、無愛想で、でもどこか憎めない、そんな人です。でも考えてみてほしいんですが、普通死神って黒い服着てませんか?蒼は真っ白な服で、死神というかもはや天使では……。でも彼は頑なに自分は死神だと言い張るんですよね。まあそれにも理由はあるんですが。
ちなみに、蒼ルートは真相ルートになるので一番最後にクリアするのがおすすめです。
遠野十夜 -作家の兄-
ヒロインの兄になります。この兄の第一印象は普通にやべえシスコン。いや、やばいです、開始早々ハッキリ言って気持ち悪いくらい妹と共依存していらっしゃる。妹のことが大好きで大好きで大好きで、妹のためならなんでもできる、妹にゲロ甘々でドロドロに甘やかす優しいお兄さんです。
正直、初めから(これ兄ルートのエピローグかな??)くらいの糖度で始まるので、正式に兄ルートに入ったらどうなるんや……R18になったらどうしよう……みたいな不安がありました。どうなったかは皆さんの目で確認してください。
そして、こんなに妹を溺愛していたら、兄ルート以外に行った場合この兄ちゃんどうなると思います?だってこんなにやばいお兄さんですよ、怒り狂って妹監禁したり相手を殺したっておかしくないレベルなんです。どうなると思いますか?他の攻略キャラに行った時のお兄さんにも是非注目してみてください。
日生光 -理想の王子様-
多分一番人気なのではなかろうか。飄々としていて声帯が鈴木達央。多分一番人気なのではなかろうか。
日生先輩に関してはもうプレイしてくれ、そして感じろしか言えません。彼もかなりキーパーソンで、彼に関して何か言うとぜ〜んぶネタバレになっちゃうのでダメですね。
でも、うん……いや、なんでもないです。
桐島七葵 -堅物な先輩-
彼もキーパーソンです。ヒロインの心良き相談相手になってくれます。彼にしかできない、彼だからこそできることがこの世界には沢山あります。他の人には絶対にできないことなんです、それが。
彼に関しても何か言うとネタバレになっちゃうので言えませんが、一つ言えるとしたら、エンディングムービーでの彼の視線でしょうか。これは全部クリアして真相を知ってから気付くと本当に感動します。彼はそうなんです。そうなんです彼は……。
千代
千代〜〜〜!!!!!千代〜〜〜!!!!!!となります、絶対になります。もう私は千代のせいで涙なしで君が代が聞けない体になりました。側から見たら右寄りのヤバい人ですね。
言葉にして相手に伝えることができるなら、伝えた方がいいんじゃないかなと彼は言うんですが、それがもう、もう……そうだねその通りだねって感じですよね……。
千代に関しては言の葉システムで可視化されるあるシーンがあるのですが、そこは絶対に見てほしい。プレイしていて(ん?)となる不自然な場面があるのですが、その真相がわかるともうダメですね、なんであんなことするんだろうかこのゲームは……。そうなんです、言葉にして相手に伝えることができるなら、伝えた方がいいんですよ。だっていつか、絶対に伝えられなくなる日が来るんですからね。
やばい、書きたいこと全部書いたのに全然販売促進になってない。
でも個人的には満足です。ここまで読んでくれた人は多分買ってくれます。ありがとうございました。
絶叫クイーンが強すぎるヒロインとして帰ってきた【ハロウィン感想】
ハロウィン観てきました。
こちら、40年前の1978年にジョン・カーペンター監督で製作されたシリアルキラーの同名ホラー映画の正統派続編となっております。1作目のあらすじがこちら。
1963年10月31日のハロウィンの夜。イリノイ州にあるごく普通の平和で小さな町、「ハドンフィールド」で殺人事件が起こった。現場のマイヤーズ家で殺害されたのは、その家の長女、ジュディス・マイヤーズ。そして、彼女を殺した犯人はマイヤーズ家の長男(ジュディスの弟)で、まだ6歳のマイケル・マイヤーズであった。マイケルは責任無能力の異常者として、直ちに精神病院に措置入院となるも、マイケルの担当医を務める事になったドクター・ルーミスは、マイケルの中に秘められた危険性に気付き、彼に対する警備体制の強化を求める。しかし、医師達はマイケルがまだ幼いのを理由に相手にしようとしなかった。
悪夢の殺人事件から15年後。21歳になり、それまで病院でおとなしくしていたマイケルは突如脱走。途中で殺害した作業員から作業つなぎを奪い、更には金物店で白いハロウィンマスクと洋包丁を盗んだマイケルは、高校生のローリー・ストロードの命を狙う。その一方、マイケルの担当医で、拳銃を持ったルーミスが、マイケルの入院していた病室に残された「Sister(姉)」の文字を頼りに、彼の実家のあるハドンフィールドに訪れていた。
(Wikipediaより引用)
要するに、変なマスク被った異常者が怪物並みの力を振りかざして人間を襲うっていう、悪魔のいけにえやら13日の金曜日やらエルム街の悪夢やらと並ぶホラー映画の金字塔な作品です。
ハロウィン自体は8作ほど展開されているシリーズものですが、今回は1作目の40年後なので、2や3(3は外伝的な内容ですが)といった続編の内容は汲んでいないため、2で発覚した殺人鬼マイケルとヒロイン・ローリーの関係性などはまっさらな状態なわけです。
なので今までのハロウィンを見たことないよ〜という人も、大まかに「マイケルという異常者がローリーという女の子を襲った事件が40年前にあった」という背景さえ知っていれば楽しめちゃうわけです。
というか、こんだけ言っといて私自身ハロウィンシリーズは一作も見たことがありません。なぜならレンタル屋、動画配信サービス共にほぼハロウィン作品を取り扱っていないんです。
見る方法が本当に限られているため、なかなか簡単に見ることはできません。
もし見るのであれば、ロブ・ゾンビ監督の2007年リメイク版ならレンタル屋だったりにあるかもしれないです。前にTSUTAYAでなら見かけました。
そんなわけでここからはネタバレなしのレビューになります。
そもそも私、洋画ホラーはわりと好きなんです。なぜなら殺人鬼や幽霊の魅せ方にかける演出のこだわりがかっこよすぎるから。
邦画は、この前リングや仄暗い水の底からを手がける中田秀夫監督の映画、女優霊を開始10分で断念してしまったくらい苦手です。自然なくらい不自然なものがそこにいるという演出が本当に苦手なんです。
話は逸れましたが、ハロウィン。ハロウィンの話です。
この作品にもたくさん詰まってましたね、殺人鬼マイケル・マイヤーズをいかにかっこよく魅せるかという製作陣のこだわりが。
結構殺人鬼映画って、マスク被ってたりするキャラ多いじゃないですか、マイケルもそうなんですけど。ジェイソンといえばホッケーマスク、レザーフェイスといえば人間の皮のマスク、マイケルといえばハロウィンマスク。
逆に彼らって、そのマスクを被ってないと彼らとして見られないというか、ジェイソンの素顔は醜いという設定なんですけど、じゃあジェイソンが素顔で出てきてももうこっちはジェイソン=ホッケーマスクという等式が成り立ってるわけで、(??)となってしまう。
つまり、もうあのマスクが彼らの顔なんですよね。
さて、今回のハロウィンのあらすじが以下の通りです。
第1作から40年後、殺人鬼マイケル・マイヤーズが、精神病棟から強固な刑務所に搬送される途中に脱走した。
過去の事件がトラウマになっていたローリーは、疎遠になっていた娘カレンと孫アリソンを守るために闘う。
(Wikipediaより引用)
精神病棟から脱走してるんです、マイケル。つまり素顔なんですね。なにもマスク被ってない。マイケルの役も40年前と同じ役者、ニック・キャッスルが演じているのですが、正直マスク被ってないとこっちとしては(マイケルなんだろうけど誰?)みたいな、そんな気分になってしまうわけです。
そんなマイケルが、自分のハロウィンマスクを取り戻して被る、そのシーン。まるで一人の人間が自分自身を取り戻したかのような、正直感動さえ感じる。
なんであんなにかっこいいん。
そしてそれ以上に見てほしいのが、ハロウィンに浮かれる民家を手当たり次第に襲いまくるシーンです。
そこ、5分近くあったと思うのですが、なんとワンカットです。ずっと1台のカメラでマイケル主観で撮影してます。
ワンカットってカメラに映っていないところこそロマンがあるっていうか、映っていないところこそ見せ場みたいなところがあるよなと思っていて、どう立ち回るか、役者と役者の呼吸の合わせがぴったり同じじゃないとできないことなんですよね。少しでも早かったり遅かったりがあれば不自然になる。言ってしまえば舞台裏すら舞台上みたいな。
だんだん何言ってるかわからなくなってきたので黙りますが、とにかくそのシーン、最高です。見て。
そして忘れてはいけない、今回はローリー・ストロード役のジェイミー・リー・カーティスが60歳でバリバリ銃器振り回すお婆ちゃんとして登場します。これがまためちゃくちゃカッコいい。
かつてその悲鳴が壮絶すぎてついたあだ名は“絶叫クイーン”。
今作では40年前のことがPTSDになっている一方で「絶対にマイケルはこの手で殺してやる」と準備に準備を重ね、今ではもう銃の腕前は一級品。多分そんじょそこらの殺人鬼は全員ローリーが殺せます。
ネタバレになるので控えますが、もう最後の方はどっちが殺人鬼かわかりません。(ローリーに感情移入してマイケルの登場にビクビクしてたのに、アレ……??)みたいになりました。
そしてまたローリーの娘、カレンも最高に痺れます。見終わったらカレンに惚れていること間違いないです。
長々と語りましたが、ハロウィン!本当に面白かったです!
最恐VS最強の対決、ホラーやグロが苦手な方でも見やすいと思いますので、是非ご覧になってください。